神奈川県の教育への提言

神奈川県の教育への提言

 

 

私が神奈川県議会議員に初当選してから10年を超える月日が経とうとしている。 この間、教育行政を所管している文教常任委員会の委員や委員長を務めてきた。 資源のない日本にとって最大の財産は人材であり、私の住む中原区の皆様もお子様の教育に力を入れていらっしゃる方が非常に多い。そこで自らの経験から見た神奈川の教育に関する所感を書いてみたい。

 

1.教育費負担の軽減

 

 最大の課題は、何と言っても子育てに対する経済的な負担を軽減すること、特に将来日本を背負って立つ子どもの教育に関しては、国としての『保護者の負担軽減政策』を打つことが必要だと考える。そのための具体策として、以下の2つを主張したい。

 

対策1 高校無償化の所得制限を撤廃すべき

 

まず提案したいのは、『高校無償化の所得制限の撤廃』である。

 今となっては非常に批判の多い民主党政権だが、一般のご家庭の子育てに関する負担を軽減しようとした壮大な試み、方向性については決して間違っていなかったと確信している。実際に民主党政権では高校授業料の無償化が実現したが、その後の政権交代によって、対象となる家庭に所得制限が課されるようになってしまった。結果として、現在は公立学校・私立学校ともに、年収910万円以上 の世帯は高校無償化の対象から外されている。

 そもそも、私は少子高齢化が進む我が国の方向性として『子どもは日本の将来の宝』であるとの考えのもと『子どもたちは社会全体で育てていく』という政策転換を行うべきと考えており、『あらゆる子育て支援というべき政策』に『所得制限はなじまない』と考えている。

 実際に主要先進国のほとんどは高校授業料を無償化しており、していないのは韓国、イタリア、ポルトガルくらいである。1966年に国連で採択された「国際人権A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)」で中等・高等教育の漸進的無償化が規定されており、各国はこれに基づいて無償化を実現している。こうした世界的な流れを無視すべきでない。わざわざ日本が政策を後退させて無償化の対象を制限するのは、国際的な潮流に反する動きだといえる。

 したがって、安倍政権が設定した所得制限を撤廃し、全ての世帯が平等に支援を受けられる制度に戻すべきである。これこそが、「家庭の経済力に関わらず、社会全体で子供を育てる」という理念を実現する方法であり、県議会としても同主旨で国に対して意見書を提出すべきである。

 

対策2 県外私学通学者にも補助すべき

 

 次に提案したいのは、県外私学通学者への補助である。

 高校無償化の一環として、私立学校に通う生徒の家庭には、国と神奈川県から授業料の補助が行われている。このうち国の補助は、通学先が県内であっても県外であっても同じように支給される。しかしながら、神奈川県の補助は、県内に在住・在学していることが要件となっているため、東京都など県外への通学者は対象となっていない。

 昨年の本会議での一般質問の際、私が黒岩知事に対して指摘したように、川崎市は川を一本越えれば東京都ということもあり、その地域特性として、通勤・通学を含めた日常の生活スタイルが、都内と一体化している方達が非常に多いという実態がある。通学という面に着目すれば、平成25年度の川崎市内の公立中学校卒業者9,663名のうち、進学先を県内の私立高校とした方が925名であるのに対し、県外の私立高校とした方は2倍以上の2,225名という調査結果が出ている 。

  もちろん、県内私学通学者に補助対象を限定しているのは『県内私学振興』の側面があり、そのすべてを否定するものではない。しかし、川崎市民が多額の県税を支払っている以上、その受益を受けるのは当然であり、市民ニーズの高い都内私学通学者を補助対象とすることは妥当であると考える。 また、そもそも論で言えば高校無償化は、学校への補助ではなく家庭への補助である。県民間の行政サービスの公平性という観点からも、通学先が県内であっても県外であっても、県内に在住していれば同じように支給対象とすべきである。

 

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2.学力の向上

 

 保護者の負担軽減という経済的な部分に着目をし、上記の提案をしてきたが、やはり教育は質が大切である。その観点から、学力向上に向けたいくつかの提案をしてみたいと思う。

 

対策1 土曜日授業の実施

 

1番目として挙げたいのはやはり『土曜授業の実施』である。

 神奈川県の子ども達の学力は、小学生は全国平均より下、中学生は全国平均とほぼ同レベルである。なお川崎市は、ともに全国平均よりやや上である。一方で東京都は、神奈川県や川崎市より上位に位置しており、全国的に見てもかなり上位の成績となっている。

 

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東京都が高い学力を実現している原因の一つとして、土曜日における補習授業が広く行われていることが挙げられる。東京都は全国に先駆けて、多くの小中学校で月1~2回の土曜授業を行っているのである。一方で、神奈川県ではまだ、土曜授業はほとんど行われていない。

 

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 文部科学省が平成25年11月に土曜授業を行いやすくする制度改正を行ったこともあって、全国的にも土曜授業を行う学校が急増しつつある状況である。 本県でも、学力の向上は保護者の強い関心事項であり、公立学校への信頼を確保するためにも、土曜授業の実施は重点的に取り組むべき課題だと考える。東京都と同水準の学力を達成することを目指して、関係者との十分な理解と協議を経たうえで積極的な対策を講じるべきである。 制度上は、実際に土曜授業を実施するかどうかは各市町村が決定する問題である。しかし県としても、県内政令市との連携や、一般市町村への働きかけによって、土曜授業の実施を推進することは十分可能だろう。

 

対策2 公立中高一貫校によるエリート養成

 

 学力向上の2点目の対策としては『公立中高一貫校によるエリート養成』があるだろう。私は教育のありかたとして、将来の日本社会を背負う『自覚と志』を持ち、世界に向かって飛躍する、能力ある人材を養成することが重要だと考える。そのため、青年期から社会における自らの使命と役割を自覚し、社会に役立つべく研鑽をつむ、能力・意欲ある人材を積極的に育てていくべきと考える。

 しかしながら、昨今の世情を見ると、持って生まれた階層ともいうべく保護者の所得によって学歴が左右される実態もおこりつつある。例えば日本社会のスーパーエリートの証の一つでもある東京大学の学生をみると、親の世帯年収950万円以上が約6割となっており 、平均年収は1,000万円を超えるものと推定されている。また、これとも関連するが、過半数が私立の中高一貫校の出身者である。

 もちろん、東京大学に代表される一流大学だけがエリートということではないが、ある一定レベルの大学に入学する事がその後の人生を左右するということも完全には否定できない。 よって、まずはいわゆる一流大学に入学する事も(を、ではない。あくまでも、『も』、だ。エリート=学歴ではないからであり、受験だけでなく幅広い視野を身につける意味でのエリート校だからだ。)目指した公立における中高一貫校があってもいいだろう。また、それが神奈川県らしい特色ある高校教育ではないだろうか。

 現在、神奈川県には公立の中高一貫校が4校設置されている。しかし、これは県内の生徒数から考えると少ない方であり、仮に全国平均並みに公立中高一貫校を設置するならば、県内に10校程度はあってよい計算になる。現状では、神奈川県の生徒は他の都道府県の生徒と比べて、公立中高一貫校という選択肢が十分に与えられていないのだ。

 

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各地に設立されている公立中高一貫校は優れた実績を残しており、生徒・保護者からのニーズは高い。現在は、神奈川県内から都内の私立中高一貫校に進学する生徒が多くなっているが、県内に公立中高一貫校の選択肢が多ければ、県内通学を選ぶ生徒も増えると考えられる。生徒・保護者のニーズに対応するためには、公立中高一貫校のさらなる増設を検討すべきである。 現在、川崎市内には、公立中高一貫校として川崎市立川崎高等学校・附属中学校(川崎区)が設置されているが、この他にも、県立の中高一貫校を2校(中部・北部)設置することを提案したい。例えば、新城高校(中原区)と多摩高校(多摩区)を中高一貫校化し、県立のエリート校化することも考えられる。 また、大学と提携して、こうした一貫校を付属校化、あるいは指定校化して、卒業生の一定割合は提携する大学に進学できるような仕組みも検討すべきである。

 

3.道徳教育の充実

 

 しかし、どんなに有能な人物であっても冷酷無比のドライな人間など必要はない。すぐれた能力共にやはり人間味ある感性豊かな人材を形成する事が教育には必要である。その意味において神奈川らしい『道徳教育の充実』を提唱したい。

 幼少期から、善悪の判断やルールを守ること(規範意識)や、社会の構成員としての「公」の意識(公共心)を育成することや『人としての思いやり、優しさを』育てていく事は大変重要であり、そのための道徳教育を充実する必要がある。 国の政策としても道徳教育を強化する方向であり、今年10月には中央教育審議基が道徳の教科化を提言している。この提言を受けて、平成30年にも道徳が正式な教科になる予定である。また、文部科学省は、今年度から、これまでの「心のノート」に代わる新たな道徳教材「私たちの道徳」を作成し、各学校に配付している。 こうした国の動きも考慮しながら、神奈川県独自の教材の開発、教員研修の強化、指導法の研究開発など、道徳教育の充実に取り組む必要がある。