原発ゼロ社会を目指すべきだ

 

2014年4月11日安倍政権は国のエネルギー指針になるエネルギー基本計画を閣議決定した。この計画は『原子力を重要なベースロード電源』と位置付けるだけでなく、『原子力安全規制委員会の安全審査に合格した』との前提ではあるが『原発の再稼働を進める』と明記したのが大きな特徴であり、これは、民主党政権下の原発ゼロ政策が大きく転換され、今後も原子力を使い続けると宣言した事を意味している。

 

 東日本大震災が来る前、私は原発安全神話を完全に信じていた。どんな大災害が起ころうとも、人為的なミスが重なろうともそれを二重三重でチェックできる体制が整っており『人類の英知を結集した原子力発電所』は『絶対に安全』であり、チェルノブイリのような大きな事故は大規模災害を含めたどのような事態が起きようとも日本のような科学技術大国ではありえないと確信していた。

 

 しかし、3.11の大震災が起き原発安全神話は崩れた。菅総理の依頼で原子力委員会の近藤委員長が作成した「最悪シナリオ」によれば、福島第一原発から170km以内が「強制移住」、250km以内が「避難(希望者)」となっている。一歩間違えば首都圏の3000万人が避難を強いられるだけでなく、関東全域が長期間にわたって人が住めない事態に陥る可能性もあったのだ。

また、今も放射能(放射性物質)がダダ漏れともいえる状況が続いているだけでなく、もう一度大地震が来たとき広島原爆の5000発分の放射性物質がある四号機の燃料プールが絶対に倒壊しないとはだれも言い切れない現実も解消できていない。

 

今回の大震災の原発に関する教訓は二つである。一つ目はどんなに人類の英知をつくしても『想定外』の事態は起きうるという事。二つ目は今の人類では原子力を完全にコントロールする技術はなく、ひとたび暴れだしたら誰も手をつけられないという事だ。

 

この教訓から、私は原子力発電の持つリスクは社会で許容できるリスクを超えていると考えるに至り、一日も早い『原発ゼロ』社会の実現を目指すべきとの立場に立っている事を冒頭に申し上げたい。

 

○「原発がなければ電気が足りない」というのはウソ。

『原発がなくなると電気が足りなくなる、江戸時代に戻る覚悟がないのに非現実的な事をいうな』私が原発ゼロの立場を説明するとき、こう反論する方が意外に多い。

事実を述べれば、2013年9月の大飯原発4号機の停止以来、日本の原発はすでに一機残らずすべて停止し『原発稼働ゼロの状態が続いている』が実際に電気は足りている。このことからわかるように原発を止めても江戸時代の生活に戻るような極端な事にはならない。

 

 

○現状の課題と解決策

課題1 電力に余裕がない

とはいうものの、いくつかの課題がなくはない。その一つは『電力の余裕がない』という事だろう。電力については「予備率」が3%を下回ると停電のおそれがあるとされている。現在、東日本は予備率に比較的余裕があるが、関西電力や九州電力は、東日本から電力の融通を受けなければ予備率が足りない状況がある。

 

※予備率は、最大需要に対する供給余力を示す指標

 

 

対策1 省エネの推進

このことの解決策としてまず挙げられるのは、自らの努力によって電力を抑える取り組みを推進する、すなわち更なる『省エネの推進』だろう。

クールビズの徹底(冷房温度の見直し)、LED照明の普及といった従来からの節電対策に加えて、私が提案したいのは、建物の断熱化である。

日本の住宅は、伝統的に木造で風通しを重視しているため、断熱性能が非常に低い。例えば、日本とドイツの住宅には3.5倍の断熱性能の差がある。ドイツでは住宅の断熱化が法的義務となっているため、壁が厚く、窓には樹脂や木製のサッシが使われている。日本の住宅の断熱基準は、ドイツどころか、中国よりも低いのだ。

高断熱住宅は、年間消費電力の10%を削減できるとされる。全家庭が導入すれば、原発約4基分の電力が削減できることになる。オフィスも含めれば、さらなる削減が可能である。

 

対策2 火力発電の増強・効率化(老朽化火力発電を速やかに最新鋭石炭・LNG発電に)

解決策の二つ目は『火力発電の増強・効率化』である。現状では、コストや安定性を考慮すると、原発を代替できる電源は火力発電しかない。原発がなくても電気が足りる状態を作り出すために火力発電を増強する決断をすればいい。そして、「火力発電の新設」や「老朽化した火力発電所の更新」を積極的に行い、火力発電を強化する取り組みを推進すべきである。特に、石油から石炭やLNG(天然ガス)への転換が効果的である。

もちろん、火力発電は万能ではないし様々な課題がある事も認めるが原子力発電の持つリスクよりよっぽどいいだろう。

 

 

対策3 再生可能エネルギーの促進

 解決策の三つ目は『再生可能エネルギーの促進』である。もちろん、再生可能エネルギーは、現状では原子力発電の代替にはならないが、発電量の増加には貢献することはできる。特に、太陽光発電は昼間のピーク時に発電量が最大になるため、他の発電設備への負荷を減らすことに役立つ。

 

対策4 公的支援を含めた送電網の増強

 解決策の四つ目として『送電網の増強』という視点があるだろう。現在、再生可能エネルギーの買取りを電力会社が拒否するという事例が多発している。これは、送電網の容量が足りないためである。再生可能エネルギーのさらなる普及のためには、公的支援を含めた送電網の増強が不可欠である。

また、そのための財源として今まで毎年かかってきた原発の立地対策費の1,000~2,000億円を利用してもいいだろう。

 

以上の四つが『電力の余裕がない』という課題に対する私の解決策である。

 

 

課題2.発電コストが高い

 課題の二つ目は発電コストが高いという問題である。前項において火力発電の課題と書いたがこの多くはコストの事である。現在火力発電の燃料代が高いため、原発停止により大きなコストが発生しているのも確かである。

 

対策1 安いエネルギー源の探求

この問題については米国などからのシェールガス輸入、再生可能エネルギーのコスト削減のための技術開発など、原発以外の発電コストを下げる努力をすることで解決できるだろう。

また、繰り返しになるが、原発の持つリスクを許容するより時間やコストがかかっても原発に依存しない社会をつくるのが未来を生きる今の子どもたちに対する責任ある取り組みだと確信している。

 

対策2 公共事業(道路)財源の活用

 原発停止によって、火力発電の燃料費として年間約3.5兆円を超えるコストが発生している。このコストがすべて、一般家庭や中小企業の電気料金にまで転嫁されてしまうと、国民生活や企業活動を圧迫することになる。

 そのため、年間約6兆円の公共事業費(特に年間約1.3兆円の道路予算)の一部を、電気料金軽減のための補助財源とすることを提案したい。当然、道路などの建設ペースが遅くなるわけだが、原発ゼロに伴うコストとしては十分に受け入れ可能だと考える。

平成24年度 平成25年度 平成26年度
公共事業関係費 4兆5,734億円 5兆2,853億円 5兆9,685億円
うち道路整備事業費 1兆202億円 1兆323億円 1兆3,228億円

 

 

○原発の持つ致命的な課題

1.使用済み核燃料処分ができない。

ここにいたるまで、原発が稼働していない現在の状況の持つ二つの課題と自分なりの解決策を提示してきた。しかし、最後に『原発が稼働する事により起こる致命的ともいうべき問題点 』を指摘しておきたい。

それはいうまでもなく、使用済み核燃料の処分ができないという事である。原発が「トイレのないマンション」と呼ばれるのはこのためである。

 

もちろん、理論上は解決しており、原発の使用済み核燃料は、再処理した後に地下深くに埋めて、十万年閉じ込めておくことになっている。これがいわゆる『地層処分』である。

しかし、冷静になって考えた時、地震・火山大国の日本で、十万年後まで安定している地層などない。仮にあったとしても、そもそも現代の科学技術では、場所の特定は不可能だ。また、10万年という気が遠くなるような長い期間、一体誰が(どこが?)どのような管理をして安全を確保するのかいまだに不明である。

 

もちろん、『使用済み核燃料の処分場所が国内には存在しない。だから、外国に受け入れをお願いする』というやりかたを唱える方々もいるのは承知をしている。

しかし、外交関係は常に変化し続ける。未来永劫受け入れを外国にお願いする事はできないと考えるのが自然であり、国内で処分する場所がないと必ずいつか行き詰ると考えるのが自然であろう。

※ 2014年7月発表(当時の事実関係で書いてます。)