今こそ、不平等条約日米地位協定の改定を!

1.「日米地位協定」とは?

 

 9月19日に集団的自衛権の行使を認める安全保障法制が成立した。その際、民主党は、①法案審議が強引で議論が足りないこと、②集団的自衛権の行使を認める要件が曖昧であることなどから、安倍政権が提出した法案には反対した。しかし、党の方針としてあらゆる集団的自衛権の行使に反対しているわけではないのは言うまでもない。

また、私自身も強引な海洋進出を進める中国、日本人を国家的に拉致した北朝鮮などの安全保障上の脅威がある以上、我が国の自衛のために必要な手段として、憲法の枠内という法治国家として当たり前の前提の下に集団的自衛権の行使を認めるべきと考えている。(余談ではあるが、もし仮に安全保障上現行憲法を超える集団的自衛権の行使が必要なら、国民皆様のご理解を得て憲法を改正すべき。憲法守って国滅ぶのは避けるべし、また、憲法については『平和主義の理念』を大切にしながらも、時代の変遷とともに適時柔軟に改正すべきというのが私の立場。)

安全保障法制が抱える問題については今なお様々な議論が行われているが、成立したという現実を踏まえると、結果として今後の日米関係は大きく変わる事になる。これまでは、日米安保条約のもと、米軍が日本を守り、日本は米軍に基地を提供するという関係だったが、今後は、日本が米軍を支援するという役割をより積極的に果たすことになっていく。

 

そこで、今回問題提起したいのは「日米地位協定」についてである。あまり聞いたことがない方もいらっしゃると思うが、これは、日米安保条約と同時に締結された、在日米軍に対して様々な特権を認める協定(条約)であり、以下に述べるように極めて不平等な内容になっている。

問題なのは『不平等さだけでない』なんと、締結から55年間、一度も改定されたことがないばかりか、日本政府は改定を正式に求めたことすらない。ちなみに、日本と同様に米軍等が駐留しているドイツ、イタリア、韓国が、交渉の末に実質的な改定を実現している。このような現状を放置する事は、独立国家、主権国家として明らかにおかしい。主権国家の権利として、国民のためにも改定を求めていくべきだ。
特に今回の安全保障法制をこのまま運用するならば、これまでのように一方的に米軍が日本を守るという関係ではなくなってしまっている。

ならば、日米地位協定もより平等になるように改定すべきと強く主張すべきであろう。

 

2.改定すべきポイント

 

主張1:米軍基地のいわゆる「治外法権」の解消を!

 

米軍基地の敷地は米国の領土ではなく、建前上は日本の法令が適用されることになっている。しかし、日米地位協定によって、米軍は基地内で「管理のため必要なすべての措置をとることができる」とされており、事実上、米軍が専属的に管理しているのが実態である。そのため、日本の領土でありながら、日本側が勝手に立ち入ることができないという極めて歯がゆい状況にある。

今年8月、相模原市の米陸軍相模原総合廠で倉庫の爆発事故があったことは記憶に新しいと思う。この時は、相模原市と米軍が結んでいる「消防相互援助協約」に基づく米軍の要請があったため、相模原市消防局が直ちに現場に駆け付け、共同で原因調査も行った。しかし、これはあくまでも米軍の要請に基づくものであり、日米地位協定上は日本側に権限はない。米軍が認めなければ、日本側は消火活動も調査も行う権限もないのだ。

 

日本ではそれが当たり前と思われているが、すべての海外でそうなっている訳では決してない。例えばドイツの場合、米軍を含むNATO軍が駐留しているが、地位協定の改定によって、ドイツの連邦、州、地方自治体当局の基地内への立ち入り権が認められている。
日本の警察も消防も米軍基地に自由に立ち入れないという「治外法権」状態を改め、米軍基地への日本の主権行使を取り戻すことが必要だと考える。

 

主張2:米軍機に日本航空法の適用を!

 

 日米地位協定によって、米軍機には日本の航空法が適用されず、『基地間移動』という大義名分の下、全国どこでも好きなように飛ぶことができるようになっている。

残念ながら、地位協定上、日本側にはそれを止める権限はない。

だからこそ、神奈川県の厚木基地をはじめ全国各地で、米軍機による騒音や低空飛行が問題になり、飛行停止を求める訴訟も起こされているが、日本の裁判所は、そもそも日本側に権限がないため、被害を認めても、米軍の飛行停止といった判決を出すこともない。

これで、果たして日本は独立国家と言えるのだろうか?

 例えば、ドイツの地位協定では、NATO軍機はドイツの航空法に従うことになっている。よって、基地外で訓練を行うには、ドイツ連邦国防大臣の承認が必要である。また、イタリアでは、米軍基地はイタリアの管理下にあり、飛行計画を毎日イタリア側に提出する他、米軍の行動が国民の生命・健康に危険を及ぼす場合には、イタリア軍司令官は米軍の行動を中止させることができる。

 このように、日米地位協定は、他の敗戦国との協定に比べても、明らかに不平等な内容になっている。「戦争に負けたから仕方がない」では決してないのだ。

ドイツ・イタリアは、米国との粘り強い交渉の末にこうした権利を勝ち取った経緯がある以上、日本政府も、日本国民の利益を守るため、地位協定を改定して米軍に日本の法律を適用させるべきと考える。

 

主張3:刑事裁判手続の改善を!

 

 課題はまだまだある。皆様は、日本国内での米兵による事件が度々ニュースになるのをお聞きになったことがあるかと思う。この問題の背景にも、日米地位協定があるのだ。協定によれば、米兵(軍属・家族も含む)が日本国内で犯罪行為を行った場合、公務外の罪であれば日本側が裁判権を持つことに一応なっている。

しかし、ここにも大きな問題が潜んでいるのだ。

例えば、小学生の通学中の列に、飲酒運転の米兵の車が突っ込む事件が起きたとする。そして、米兵はひき逃げしたまま、基地に逃げ帰ってしまった。この場合、日米地位協定上、な、なんと日本側が容疑者を起訴するまでは、米軍は身柄引き渡し義務がない。限りなく理不尽なことだが、それが協定で正式に決まっているルールとなってしまっている。身柄がなければ十分な取り調べもできないだろうし、結果的に罪に問うことも難しくなる。

平成7年9月、沖縄で米兵3人が女子小学生を拉致・強姦した後、基地に逃げ帰るという事件が起きた。この時も、容疑者が起訴されるまで日本側に身柄が引き渡されず、沖縄では大規模な抗議運動が起きた。当然の怒りである。

この事件をきっかけに、日米両政府の合意によって、殺人・強姦という凶悪犯罪に限っては、起訴前の身柄引渡しが可能となった。

 

しかし、ここにも問題がある。なぜなら、これは協定の改定ではないため、あくまでも米側の「好意的な考慮」によるものとされており、強制力はないのだ。日本人が、我が国の国民が被害に遭った凶悪犯罪でも、日本は米国の「好意」を乞い、認められれば感謝する、とも言える立場となってしまっている。これでは、とても独立国同士の対等な関係とはいえないだろう。地位協定を改定し、起訴前の身柄引渡しを米側に義務付けることが必要である。

 

主張4:日米合同委員会の透明化を!

 

 日米地位協定の運用は、日本の官僚と在日米軍関係者で構成される「日米合同委員会」で決定される。

この委員会では、米軍基地をどこに置くか、どこを返還するかをはじめ、諸々の重要事項が決められる。
さらっと書いたが、これは物凄い権限である。現実的には絶対にありえないが仕組みを説明するために極端な例を出すと、例えば中原区の多摩川河川敷を米軍の演習場とする、武蔵小杉駅前に米軍基地を作ると『日米合同委員会』決めたとする。するとそれは国際的な政府間の合意となり国家間の約束としての拘束力をもつのだ。

しかし、これだけの権限を持つにも関わらず、会議の中身は一切公開されず、合意の一部(公開しても問題ない部分)だけが非常に簡潔な形で公表されるにすぎない。

 

更に驚くことに、この委員会には、大臣や国民から民意の洗礼を受けた国会議員などの政治家は一切参加していない。

また、基地を抱える地元自治体からの参加もない。

 

国家運営において機密事項があるのは当然であり決してそれをすべて否定するものではない。

しかし、あまりにも制度設計がおかしいのではないか?

 

密室で、民意を得たと必ずしも言えない一部の人間と米軍だけで国民の生活に関わる重要事項を決める全権を持つ仕組みが実際に存在していること自体には違和たざるをえない。

繰り返しになるが、安全保障上クローズしなければならない部分がある事は決して否定しない。しかし、日米合同委員会に、国会や地域代表が関与できる仕組み等を導入するなどし、もう少し透明性を高める工夫が必要だろう。

主張5:その他の不平等も解消を!

日米地位協定には、他にも様々な不平等が存在する。例えば、米軍基地が返還されても、米側には原状回復義務はない。つまり、返還された基地や演習場の跡地で土壌汚染や不発弾などが見つかっても、日本側の負担で除去しなければならないのだ。
しかし、日米地位協定のモデルになったとされるNATO軍地位協定では、原状回復義務が規定されている。この点でも日米地位協定の不平等さが際立ってしまっている。

 

さらに、日本は、日米地位協定上は米側が支払うことになっている経費の一部でさえ、「思いやり予算」として負担している。この費用を含め日本側の経費負担は、毎年度約1,900億円。これはいうまでもなく国民の税金である。

 

なお、米軍基地内での環境基準について、日米地位協定には書かれてないが、今年9月に日米両政府で「環境補足協定」が結ばれた。この中で、①両国の情報共有、②日米の環境基準のうち厳しい方を適用すること、③環境事故時や返還に関連する立入手続の作成、④協定の実施に関する協議、が定められた。わずかではあるが、これまでの不平等が改善された事例とは言えるだろう。

 

3.今こそ初の改定提起を!

 

1 一度も改定が提起されていない現状

 私は、現在の日本が置かれた安全保障環境を前提にすると、日米安保条約や米軍基地そのものは必要であると考えている。現行憲法の範囲内では、日本が独力だけで国を防衛するのは現実的ではないとも考えている。

 

その一方、日米地位協定の持つ不平等性を是正し、国としての安全保障を十分考慮に入れつつ日米がより対等なパートナーとなるよう模索していくことは、この国で生まれ育ったものとして当然であり、主権国家として当然の姿であるとの立場に立つ。

 

これまで、多くの問題を抱える不平等条約「日米地位協定」の改定に向けて、神奈川県をはじめ米軍基地を抱える14都道県で構成する「渉外関係主要都道県知事連絡協議会」(渉外知事会、会長・黒岩神奈川県知事)では、繰り返し日本政府に要請を行ってきた。しかし、非常に残念なことに日本政府はこれまで一度も、米側に改定を提起したことはないのだ。

日米地位協定は条約であり、制定時と同じく国会承認が必要である。また、米政府が現在の「特権」を簡単に手放すことは考えにくく、改定には困難が伴うことは確かである。しかし、米軍が駐留する他の国では、米軍による事件・事故を受けて米国と交渉し、自国の権限を認めさせてきた経過がある。

これまで、ドイツ、イタリア、韓国は地位協定の改定を実現しているのだ。他国で実現できたことが日本でできない訳はないと信じると当時に、こうした他国の姿勢と比べると、日本政府の対応は明らかに腰が引けており地方からも叱咤していくべきだと思う。

 

2 黒岩知事への質問

 

私は平成23年度、就任直後の黒岩知事に対し、地位協定見直しについての基本的な考え方を伺った。これは、新知事の地位協定の改定に対する前向きな姿勢を促すための質問であり、実際にそのように明確な答弁があったところである。

 

平成23年11月2日 県議会代表質問

 

(質問:滝田)
…このように米側に裁量権が残されたままとなっているのでは実効性が担保できないし、問題が発生する都度解決するのでは、問題の抜本的な解決にはつながらないと私は考えております。また、運用改善は政府間の協議で行われるため国民の意思や考えが必ずしも反映されないなどの課題もあるかと思います。できるだけ速やかに日米地位協定の見直しを実現すべきであると考えます。
 県議会においてもこうした考えのもと、平成15年に日米地位協定の抜本的見直しを求める意見書を決議したところであります。前知事も訪米し、国防総省や連邦下院議員等へ日米地位協定の改定の必要性を訴えるなど、積極的に日米地位協定の見直しに取り組んでまいりました。
 そこで、日米地位協定の見直しについての知事の基本的な考え方をお伺いいたします。

 

(答弁:黒岩知事)
 …運用改善では米側に裁量権が残されており、抜本的解決にはつながらないため、早期に見直すことが必要であります。さらには、基地をめぐる諸問題の解決のためには、時代の変化に対応して、基地の所在する自治体など、地元の意向を反映させる仕組みづくりや環境法令等国内法の適用など、条文そのものを見直すことが必要であり、また、その時期に来ていると思います。こうしたことから、就任以来、渉外知事会などを通じて、日米地位協定の見直しについて、国や米側に積極的に働きかけてまいりました(中略)日米地位協定を見直すことは、日米同盟の安定や基地との良好な関係づくりにもつながる大変重要な課題であります。今後も日米地位協定の抜本的な見直しに向けて、全力で取り組んでまいります。

 

3 改定に向けた初の政府間交渉を!

 

 今年結ばれた環境補足協定は、地位協定そのものの改正ではありませんが、単なる運用の改善とは異なり、両国政府間の正式な協定文書である。日本政府がようやく重い腰を上げ、米側と交渉して新たなルールを作ったという点では、一歩前進といえるだろう。しかし、日米地位協定にはまだ、日本の法律や権限が及ばない不平等性が多く残されている。

安全保障法制の成立によって、集団的自衛権の行使など、日米同盟の歴史の中でかつてないほど多くの負担を我が国が分担することになる。こうした状況を背景に、日米首脳会談を含めた政府間協議で地位協定改定を初めて取り上げ、より平等な内容とするよう米国と交渉することは、政府の国民に対する義務であると考えます。

そのために、私達県議団、神奈川県議会、そして黒岩知事が先頭に立って、政府に対し『日米地位協定の改定』を強力に働きかけるべきであると私は考えます。