子育て世帯の教育費負担軽減を実現しよう!

 

文部科学省などの調査では、子どもが生まれてから大学を卒業するまで、大体2,500万円から4,000万円の子育て費用が必要となるという。このうち1,500万円が生活費や医療費で、残りが学費などの教育費である。教育費は、幼稚園から大学まで、全て公立なら1,000万円、全て私立なら2,500万円になる。例えば、2人の子どもを私立に行かせた場合、生活費や教育費など、合計で8,000万円という巨額の費用がかかるのである。

このように子育てに関する経済的な負担、特に教育費の負担は大変に大きい。また、少子化の原因のひとつは子育てに対しての経済負担が大きいとの指摘もあり、これを軽減することは今後の我が国にとって必要な政策だと考えている。

よって、本レポートにおいて具体的な政策を提言するとともに、同趣旨での意見書を県議会から出す事を提案したい。

 

提言

1.教育費減税の導入を!!~医療費と同様に教育費も所得税・住民税を還付すべき

 

 よく知られているように、年間10万円を超える医療費(200万円まで)を支払った場合には、確定申告をすることで「医療費控除」が受けられる。所得税と住民税が一部ではあるが安くなるのだ。これと同様に、子育て世帯の負担軽減のため、年間で10万円以上の教育費を支払った場合にも、税の控除を認める制度を提案したい。

 対象となる教育費は、学校の授業料や教材費はもちろん、塾や習い事の月謝、参考書や問題集の購入費など、幅広く認めるべきである。こうした費用を合計すれば、ほとんどの子育て世帯で年間10万円は軽く超えるのではないだろうか。

 文部科学省の「平成26年度子供の学習費調査」では、中学生の学校外活動費(塾、習い事、家庭内学習)は、平均で年31万円である。医療費と同じ仕組みで教育費減税をした場合、年収600万円で年30万円の教育費を使った家庭では、4万円(所得税2万円+住民税2万円)の減税となる。私学の授業料なども加えて年100万円の教育費ならば、減税額は18万円である。

医療費を多く使う高齢者には医療費控除の制度があるのに、教育費を多く使う子育て世帯に教育費控除の制度がないのは不公平である。税や社会保障の制度は、高齢者だけを優遇するのではなく、もっと子育て世帯を支援するという視点を持つべきだ。

なお、子育て世帯の一部ではあるが、子どもが19歳から22歳までの家庭に対しては、現在も「特定扶養控除」という制度がある。最も教育費がかかる大学生を抱える家庭への支援策として、年間63万円の控除がされているのだ。

実は、民主党政権時代に、子ども手当と高校無償化を導入した際、引き換えに18歳以下の扶養控除を縮小した経緯がある。当時の財政状況を考えればやむを得ない判断であった。しかし、現在は当時とは違って、消費税が8%、そして10%に引き上げられようとしている。こうした財源を使えば、教育費減税を行うことは十分に可能だと考える。

 

提言

2.働く主婦の負担軽減~年収200万円までを扶養内へ。103万円の壁・130万円の壁を解消すべき

 

 現在の税・社会保険制度では、パートなどで働く主婦にとって、103 万円の壁(年収103 万円を超えると扶養控除が受けられない)や、130 万円の壁(年収130 万円を超えると社会保険料を払う必要がある)が、十分に働くことを妨げているという状況がある。

 特に、130万円の壁は、これを超えると急に社会保険料の支払いが必要になるため、大きな壁である。年収130万円より、年収140万円の方が手取りが少なくなるのだ。これでは「働き損」になってしまう。

 年収103万円は1か月当たり約8万6千円、年収130万円は約10万8千円である。実際、それを超えないようにパートの時間を調節している人も多いはずだ。本来はもっと働けるはずなのに働く時間を減らしているのは、家庭の収入を減らすことになるのはもちろん、社会的にも大きな損失である。

 パート収入が増えれば、それが生活費、教育費、娯楽費などに使われて、お金が社会全体に循環する。子育て世帯の所得を厚くすることによって、社会全体を活性化することになるのだ。

 現政権(安倍政権)はこの「103万円の壁・130万円の壁」への対策として、扶養控除の廃止や、社会保険料を払う年収基準の引き下げを検討している。しかし、これは方向性が全く逆で、働く主婦の負担を増やす制度に他ならない。壁をなくすために最初から負担を上げようというのは、本末転倒ではないか。また、対策と称して、パートの賃金を引き上げた企業に補助金を出すというが、壁自体が変わらなければ、何の解決にもなっていない。

現政権の方針とは逆に、扶養控除や保険料の基準を引上げて、200 万円程度までは扶養の中で働けるような制度を目指すべきである。

 

提言

3.子ども手当~現政権が導入した所得制限を撤廃すべき

 

 民主党政権が創設した「子ども手当」は所得制限が付いていない制度であったが、その後の政権交代で「児童手当」に逆戻りし、所得制限が付くとともに金額も大幅に減額された。

 子ども手当は本来、「社会全体で子どもを育てる」という理念に基づいて創設された制度である。この理念に従えば、所得制限を設けるのではなく、全ての世帯が公平に負担をし、全ての世帯が平等に支援を受けるのが、あるべき姿である。

 他の先進国でも、児童手当の制度がないアメリカは別として、イギリス、フランス、ドイツなどの諸国では、児童手当(家族手当)に所得制限はない。それが世界のスタンダードであり、「社会全体で子どもを育てる」という理念が当たり前のように実現されているのだ。

 我が国でも、子ども手当を「バラマキだ」などと安直に批判するのではなく、何にお金を使うべきであり、何に使うべきでないのかを慎重に考えるべきである。現在のような激しい少子化の進展は、我が国の将来の国力、さらには国の存亡をも左右しかねない重大問題である。少子化対策に投資することは、将来の国民・納税者を増やし、社会全体に何倍にもなって返ってくるのである。だからこそ、「社会全体で子どもを育てる」ことに意味があるのだ。そのために、子ども手当(児童手当)の所得制限を撤廃し、金額も増額する必要がある。

 

4.負担軽減策は消費税を財源とすべき

 

 こうした子育て世帯の負担軽減策を提示すると、「財源はどうするのだ」という指摘があるだろう。これは当然の指摘であり、財源のない約束をしても無責任になってしまう。私はこれらの負担軽減策は、先程も述べたように消費税を財源とすべきだと考えている。

消費税は、5%から8%になり、今後は10%に引き上げられる予定であるが、その増収分は全て社会保障に使うことになっている。この社会保障財源を、高齢者だけでなく、子育て世帯にも手厚く配分すべきである。高齢者の社会保障費の方が、人数的にも金額的にも、子育て世帯への支援よりはるかに大きい。そのほんの一部を回すだけで、子育て世帯への手厚い支援が可能になるのだ。

さらにいえば、新聞への軽減税率の適用などは撤回して、その財源も子育て世帯に回すべきである。ある民主党幹部は、新聞よりも水道や電気の方が生活必需品ではないかと言った。それにも同感であるが、教育費に回すことによって、より子育て世帯に特化した支援策が可能となる。

我が国の存亡にも関わる少子化問題に対処するために、今こそ「社会全体で子どもを育てる」という理念を実現すべき時である。県議団や県議会を通じて国に意見書を提出する事を働きかけるなど、積極的に取り組んでまいります。

 

 ※本レポートは2016年春発表しました。