警察と地域が連携した「ミニ交番」と「防犯カメラ」の設置を!

1.現状

 

 中原区の犯罪の特徴は、窃盗犯が多く、凶悪犯や粗暴犯は少ないことである。神奈川県の平均と比較した場合、人口当たりの犯罪件数はさほど変わらないが、中原区では、窃盗犯の中でも自転車盗が特に多く、犯罪全体の42.1%を占めている。次に多いのが万引き(11.2%)であり、窃盗犯以外では、器物損壊等(5.1%)が多くなっている。また、件数としてはこれらより少ないものの、暴行や傷害といった粗暴犯や、強制わいせつなどの風俗犯も発生しているので、注意が必要である。

 

犯罪発生状況
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 窃盗などの身近な犯罪が多い中原区では、地域の住民と警察が連携したきめ細かい防犯対策が、特に効果的であると考えられる。神奈川県では、身近な犯罪を抑止し、安全で安心して暮らせる地域社会を実現するため、警察力の強化に加え、県民総ぐるみで犯罪をなくしていくための規範となる「神奈川県犯罪のない安全・安心まちづくり推進条例」を制定し、平成17年4月から施行している。
 この条例では、「県及び県民等は、安全・安心まちづくりを推進するため、相互に協力するよう努めるものとする」(第5条)、「県は、警察署の管轄区域等において、県民等及び市町村と連携して、当該管轄区域等における安全・安心まちづくりを推進するための体制の整備を促進するものとする」(第7条第2項)など、県・警察と県民が連携して、安全なまちづくりを進めることが求められている。

 

2.コンビニ活用の先進事例

 

 警察と住民が連携した安全なまちづくりの取り組みは全国的に行われているが、特に先進的なものとして注目すべきなのが、コンビニの防犯拠点としての活用である。コンビニは多くの店舗で深夜営業を行っているほか、社会的責任の一環として、安全・安心なまちづくりへの協力や、青少年環境の健全化に取り組む自主的な活動を実施している。その一環として、女性や子どものかけこみ対応や、高齢者や障害者へのサポート、警察等との連携などを行っている。

 

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千葉県警では、安全で安心できる県民生活の確保と地域の防犯力を強化するため、平成25年11月から、千葉市内、市川市内の2か所で「コンビニ防犯ボックス」の運用を開始した。コンビニ防犯ボックスは、コンビニの駐車場にプレハブ型のボックスを設置して、警察官OBの嘱託職員を3名ずつ、原則として子どもや女性が帰宅する時間帯となる午後2時から午後10時までの間、配置するシステムである。
 コンビニ防犯ボックスの業務内容は、防犯ボランティアや自治会等の住民との合同パトロール、帰宅時間帯の通学路等における見守り活動、主要交差点等における街頭監視活動のほか、防犯ボランティア等に対する指導・助言、諸願届・急訴事案への一時的な対応、広報・情報発信活動、地理案内、コンビニエンスストアの防犯対策などである。
 このボックスを設置した2地区(千葉市星久喜地区、市川市南大野地区)では、侵入窃盗の件数が、それぞれ前年度より35件→15件(57.1%減)、24件→9件(62.5%減)と、大幅に減少するという効果が見られた。

 

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 コンビニ防犯ボックス(千葉市)

 

3.たきた孝徳の提案
 
これらの先進事例に学びつつ、中原区周辺の状況に応じたさらに効果的な取り組みとして、以下の提案を行いたい。

 

①公園に「ミニ交番」を設置すべき!
 
 中原区周辺では駐車場のないコンビニも多いため、千葉県と同じような取組をしようとしても難しい。そこで私は、コンビニではなく公園に「ミニ交番」を設置することを提案したい。「ミニ交番」は、千葉県の「防犯ボックス」と同じく県警OBや地域の人が詰めるプレハブ施設であるが、よりわかりやすく「交番」の名称を使ったものである 。開設時間は、公園で子ども達が遊ぶ時間(日中から日没まで)を原則とする。
 「ミニ交番」の職員は、公園内で遊ぶ子ども達の見守りはもちろん、近隣地域や通学路などの見回りも行い、きめ細かい防犯活動を展開する。千葉県の事例と同様に、中原区で多い窃盗犯の大幅な減少が見込めるほか、大人が見守る中で安心して子ども達が遊べる環境づくりが公園の内外で可能となる。
 神奈川県は、人口当たりの警察官の数が全国的に見ても少ない(平成26年の数字では、人口1,000人当たりの警察官数が17.1人で、全国32位である)。そのため、現役警察官だけでは防犯活動の負担が大きくなってしまうが、「ミニ交番」による警察官OBを活用した防犯対策によって、警察による対策を効果的に補完することができる。
 
 次に、「ミニ交番」の設置費用であるが、可能な限り民間から調達することを目指すべきである。プレハブ自体の値段は数十万円であり、電気工事や空調・備品などを含めても、百万円台で設置できるはずである。この金額の初期費用であれば、地元企業や個人から調達可能な範囲ではないか。具体的には、ネーミングライツ(命名権)を売却し、「○○(企業名)ミニ交番」などと名付けた上で、プレハブの壁を企業の広告スペースとして使えるようにする。広告効果と企業のイメージアップを考えれば、十分に魅力的な投資だろう。
 なお、ネーミングライツは全国の公共施設などで取り入れられており、広く使われている手法である。有名なところでは、「味の素スタジアム」は年間2億円、「日産スタジアム」は年間1億5,000万円で命名権が売却されている。これほど大規模なものでなくても、県有林、海岸、公衆トイレなど、幅広く導入され効果を上げている。「ミニ交番」のようなプラスイメージの施設であれば、企業からの人気も高いと考えられる。また、企業以外にも、個人の篤志家からの寄付や、町内会や商店街で寄付を集めて調達するといった方法も活用できるだろう。
 ネーミングライツや寄付によって、「ミニ交番」設置の初期費用とランニングコスト(人件費、電気代など)の両方が賄えればベストであるが、どちらかだけでも、全て県の予算で賄う場合に比べれば十分に歳出削減の効果があるといえる。
 
 「ミニ交番」は、昼間に子ども達が遊ぶ公園に設置するだけでなく、例えば等々力緑地のように、夜の人通りが少ない場所に設置することも考えられる。等々力緑地は、夜間に帰宅する子ども達が通り抜けることも多いが、道が真っ暗で怖いという相談が地元町内会から寄せられている。そこで、緑地内に「ミニ交番」を設置すれば、防犯と安全・安心対策として大きな効果があるはずだ。資金は、地域のプロスポーツチームなどから寄付を募ることも考えられる。
 「ミニ交番」の設置は、将来的には公園・緑地だけでなく、ファミリーレストランの駐車場や、活用されていない県有地・私有地などにも広げていくことも検討すべきである。「ミニ交番」による防犯モデルを、中原区から始めて全県的、そして全国的に展開していけば、地域の防犯と子ども達の安全・安心に大きく貢献することは間違いない。

 

②公園への防犯カメラ設置拡大
 
 もう一つ、子ども達の安全を守るための方策として、公園への防犯カメラの設置拡大も提案したい。神奈川県内でも、一部の公園には既に防犯カメラが設置されているが、まだまだその数は限られている。そこで、公園への防犯カメラ設置計画を県が制定し、全県的に整備を進めるべきである。防犯カメラを設置した公園は、「防犯カメラ設置公園」と掲示し、できるだけ目立つようにアピールする。それだけでも、犯罪の抑止効果が高まるはずである。
 防犯カメラは、設置費用以外にもメンテナンス費用がかかり、それが設置のネックになっている場合もある。しかし、何年かに一度メンテナンスを行うとしても、一年当たりにすればそれほど大きな金額にはならない。そこで、企業に公園自体のネーミングライツを売却し(○○(企業名)公園、などと名付け)、その費用で防犯カメラのメンテナンスを行うようにして、県の財政支出を削減する方法も考えられるだろう。
 公園への防犯カメラ設置に対しては、プライバシーの侵害になるといった批判も想定される。そこで、まず地域の住民に配慮し、防犯カメラに近隣の住居内が映らないようにするなどの配慮をすることは不可欠である。また、カメラの映像が外部に流出することのないように万全の対策を講じる必要があることも当然である。しかし、そもそも公園内は公共の場所(県有地・市有地)であるので、管理者が許可しないような、撮影されては困る行為をするプライバシーが保護される必要はなく、過剰な批判には毅然とした対応も必要である。
 公園への防犯カメラ設置が全県的に広まり、神奈川県の公園には防犯カメラが設置されているという認識が県民の間にも広まってくれば、公園内で犯罪を企てる人も自然と減り、子どもをより安心して遊ばせられる環境ができるはずである。